※当店は閉店しています。2024/1/31更新

雨水ブログ「旅の珈琲・四国編3」

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どうも雨水です。怒涛の更新です。まあこう言うのは何でも最初は勢いありますよね。

大分肌寒くなってきましたが皆さん珈琲飲んでますか?噂によるとアサガヤのウスイってお店が美味しいらしいですよ。

さて今回は旅の目的地、愛媛は佐田岬。レッツゴー岬!

思い出の宇和島を去り、八幡浜へ。ここから海を挟んで大分県に突き出した佐田岬半島を30キロくらいぶっ飛ばして行くわけです。ひたすら崖の上を。崖の上のウスイです。一本道を突き進んでいくのです。関東で言うと千葉の屏風ヶ浦に似た風景でしょうか?崖の上をぶっ飛ばすわけです。ロンドンブーツの「岬」なんか口ずさみながら。

途中パーキングに寄り、缶コーヒーを買う。

到着。

と言っても行かれたことある方はご存知と思いますが、佐田岬は崖の上に駐車場があって、そこから絶壁に沿って崖を降りて行くわけですよ。降りると小さなキャンプ場のような円形の広場がある。金田一少年サバイバルゲームの連中とかち合い、物騒な事件が起こると言う話がありましたね。あの洞穴の広場みたいな感じです。天体観測でもするためのキャンプ場だったんでしょうね。人気はありません。

そこを越え、さらに海の先へと歩いて行くと、そこが旅の目的地、佐田岬灯台です。

快晴。

海の向こうに見えるのは九州大分。私以外に動いているものはありません。

海と太陽と、向こうに見える島。その中にそれほど大きくない灯台が立っている。季節は晩夏です。陽が高い所にあります。建てられて随分と年代が経った灯台がぽつんと海の中に立っている。

皆さん中原中也はご存知ですよね。ゆあーんゆよーんゆやゆよん、の中原中也です。

あの方の詩に「思い出」と言う作品があります。以下、かなり長いですが全文引用させて頂きます。

「思い出」

お天気の日の、海の沖は

なんと、あんなに綺麗なんだ!

お天気の日の、海の沖は

まるで、金や、銀ではないか

金や銀の沖の波に、

ひかれひかれて、岬の端に

やって来たれど金や銀は

なおもとおのき、沖で光った。

岬の端には煉瓦工場が、

工場の庭には煉瓦干されて、

煉瓦干されて赫々(あかあか)していた

しかも工場は、音とてなかった

煉瓦工場に、腰をば据えて、

私は暫(しばら)く煙草を吹かした。

煙草吹かしてぼんやりしてると、

沖の方では波が鳴ってた。

沖の方では波が鳴ろうと、

私はかまわずぼんやりしていた。

ぼんやりしてると頭も胸も

ポカポカポカポカ暖かだった

ポカポカポカポカ暖かだったよ

岬の工場は春の陽をうけ、

煉瓦工場は音とてもなく

裏の木立で鳥が啼いてた

鳥が啼いても煉瓦工場は、

ビクともしないでジッとしていた

鳥が啼いても煉瓦工場の、

窓の硝子は陽をうけていた

窓の硝子は陽をうけてても

ちっとも暖かそうではなかった

春のはじめのお天気の日の

岬の端の煉瓦工場よ!

煉瓦工場は、その後廃(すた)れて、

煉瓦工場は、死んでしまった

煉瓦工場の、窓も硝子も、

今は毀(こわ)れていようというもの

煉瓦工場は、廃れて枯れて、

木立の前に、今もぼんやり

木立に鳥は、今も啼くけど

煉瓦工場は、朽ちてゆくだけ

沖の波は、今も鳴るけど

庭の土には、陽が照るけれど

煉瓦工場に、人夫は来ない

煉瓦工場に、僕も行かない

嘗(かつ)て煙を、吐いてた煙突も、

今はぶきみに、ただ立っている

雨の降る日は、殊にもぶきみ

晴れた日だとて、相当ぶきみ

相当ぶきみな、煙突でさえ

今じゃどうさえ、手出しも出来ず

この尨大(ぼうだい)な、古強者(ふるつわもの)が

時々恨む、その眼は怖い

その眼怖くて、今日も僕は

浜へ出て来て、石に腰掛け

ぼんやり俯(うつむ)き、案じていれば

僕の胸さえ、波を打つのだ

私は先ほど買った缶コーヒーをその場所で飲みました。

詩のレンガ工場を灯台に、煙草を珈琲に置き換えれば、まさにここで歌われた世界観そのものが、その時の景色であり私の心情でありました。

皆さんは普段、缶コーヒーを飲みますか?

私は今は一切飲みません。

でもあの時、佐田岬の先端の、古い灯台の下で飲んだ缶コーヒー、あれほど美味い珈琲と言うのも今までになかったんじゃないかと、今では不思議な気持ちにとらわれることがあるのです。

佐田岬で飲んだ缶コーヒーは・・・本当に美味しかった。

それが旅のせいなのか、疲れのせいなのか、夏の暑さに打たれたせいなのか、海があんまり眩しかったせいなのか、灯台がただじっと立っていたせいなのか・・・

自家焙煎をしている身としてこんなこと言うのは邪道なのかもしれませんが、缶コーヒーっていいなぁ、そう思う瞬間もありますし、それはおそらく・・・良いことですよね。

では今回はこの辺で。次あたりで四国編は終わりですね。

http://coffeeusui.hatenablog.com/entry/2016/10/24/073704